最近、いや、しばらく前からタクシーの運転手さんがご高齢の方が多いということに気がついたことはないだろうか。そして、駅前のタクシー乗り場にタクシーが少ないことに。
タクシーは、公共交通機関としては定義されていないものの、多くの人の車の代わりになるサービスだ。特に病気になったり、緊急性の高いときにお世話になることも多いだろう。
しかし、タクシーの高齢化は予想以上に進んでいる。ニッセイ基礎研究所の2022年のレポート“高齢タクシードライバーの増加”によると、
最大のボリューム層は「70~74歳」であり、全体の2割強を占めている。
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=72383?pno=2&site=nli
ということで、70歳以上が普通、という状態になっている。
年齢別の人数構成は以下のようになっている。(引用元: “高齢タクシードライバーの増加”)
2020年と2022年のグラフを比較すると、構成年齢のピークが65-69歳から、70-74歳に変わっている。たった2年の変化にも関わらず、5歳もピーク年齢が上がっているのは、理由がある。69歳未満のドライバーの引退が進んでいるのだ。もともと勤務時間が不規則で、キツイ仕事と言われるタクシードライバーが、ほぼすべての年齢で少なくなっている(40-44歳と75歳以上を除く)。コロナの影響によるタクシー稼働率の低下が原因と言われているが、
しかも、39歳以下の年齢層のドライバーは、ほとんどいない状況だ。この傾向が続くと少なくとも以下の2つのことがおきる。
- 1. 10年後は、更に高齢化が進み、大半のドライバーが65歳以上となる。
- 2. 引退するドライバーの数は現在のペースより増加する
2. のドライバー減少は、今でも起きている。YouTubeから地方放送局のニュースを参照したところ、新潟市では2019年に3800人いたドライバーが、2022年で3000人になっているという。また、より大都市である。福岡市は2019年に8400人だったドライバーは、2022年に6700人になっている。どちらの都市も概ね3年間で2割ドライバーが減少したことになる。
地方ではもうタクシーは信頼できる交通機関といえない
10年後には、タクシードライバーの高齢化がそのまま10年進むのではなく、60歳程度以下のドライバーが引退することで、高齢化の加速と、ドライバーそのものの総数が減少する。この結果、タクシーは、「急に病気になった」ときや、「高齢者の日常の足」としての機能はもはや果たせなくなるはずだ。一般ドライバーも高齢化により、免許の返納を勧められているが、もし自家用車を手放したとしても、代替手段としてのタクシーはもうない。救急車をタクシー代わりに使わないで、と呼びかけがされているが、そもそもタクシーがいない状況だ。多少の不調でも救急車を呼ばざるを得ない状況に、地方都市から徐々になっていくだろう。
対策はあるのか
タクシーが機能を喪失するまでの時間は非常にわずかしか残されていない。以下のような対策がなければ、車を運転できない人の「足」が奪われることになるだろう。
- 1. 過疎地を中心とした地方から、都市部への移住
- 2. 完全自動運転車(Level 4)の導入
- 3. Uberのような、一般ドライバーの営業運転の解禁
- 4. タクシードライバーの大幅な待遇改善
個々の対策については、別の記事にまとめていく予定です。しかし、2. は技術的にほぼ確立されているものの、各種の法規制や、万一の事故の補償をどうするかという問題で、世界中で行き詰まっている。日本は、高齢化による自動運転車の必要性という点では、世界一だ。テクノロジーという点でも、ぜひ日本で世界に先駆けて、実現してほしい。